【体質別】便秘の原因とセルフケア

「また今日も出てない…」

お腹が張って気分が重い、肌の調子もイマイチ。便秘って、ほんとうに日常の質を下げてしまいますよね。

実は、私自身も長年便秘に悩まされてきたひとりです。薬やサプリに頼る日々から抜け出せたのは、中医学と薬膳に出会ってからでした。

中医学では、便秘を「体質の偏り」として捉え、その人に合った食事や暮らし方を整えることで、根本からアプローチしていきます。

この記事では、便秘のタイプを8つの体質に分けて、それぞれの原因改善方法やってはいけないことをご紹介します。

「あ、これ私かも」と思ったら、ぜひ日々の食事や過ごし方の参考にしてみてくださいね。

目次

潤い不足タイプの便秘(陰虚)

「陰虚(いんきょ)」とは、体を潤す成分(津液や血)が不足している状態を指します。

陰は体の「水分・潤い・冷静さ」を象徴しており、これが不足すると、乾燥、熱感、不眠などの症状が現れやすくなります。

陰虚の便秘は、潤いが足りないために腸内の水分も不足し、便が硬く、コロコロとした乾燥した状態になりやすいのが特徴です。

陰虚タイプの便秘改善におすすめの食材

陰虚タイプは、体に潤いを与える食材を取り入れましょう。

おすすめ食材:

  • 白きくらげ、梨、はちみつ
  • ごま(特に黒ごま)、山芋、豆腐、豆乳
  • 百合根、クコの実

スープや蒸し料理など、水分を含んだ温かい料理がおすすめです。
梨とはちみつのコンポートや、豆乳プリンなど、やさしい甘さのスイーツにも応用できます。

陰虚タイプの便秘を悪化させること

唐辛子や激辛料理を食べる

辛味の強い食材は体内に熱をこもらせ、陰(潤い)をさらに消耗させます。陰虚タイプの便秘は乾燥が原因なので、激辛料理は逆効果です。

サウナや岩盤浴で大量の汗をかく

汗をかきすぎると津液(体の潤い)が失われ、陰虚の状態が進んでしまいます。温まることは大切ですが、発汗しすぎる習慣は控えましょう。

生姜・ねぎ・にんにくをたっぷり使う

これらは体を温め、巡りをよくする一方で「乾燥させる力」もあります。陰虚タイプには刺激が強すぎるため、潤す食材をメインに選びましょう。

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エネルギー不足タイプの便秘(気虚)

「気虚(ききょ)」とは、体を動かすエネルギー(気)が不足している状態を指します。

気は全身の活動を支える「原動力」。
これが不足すると、だるさ、食欲不振、疲れやすさなどが現れやすくなります。

気虚の便秘は、腸の動きが弱くなることで、便をスムーズに押し出す力が足りず、残便感や排便の回数が少ないことが特徴です。

気虚タイプの便秘改善におすすめの食材

気虚タイプは、消化を助け、エネルギーを補う食材を取り入れましょう。

おすすめ食材:

  • 山芋、かぼちゃ、じゃがいも
  • 鶏肉、うずら卵、はとむぎ
  • なつめ、米、はちみつ

おかゆやスープ、煮込み料理など消化にやさしい形で摂るのがおすすめです。
なつめとはちみつの蒸しパンや、山芋入りの蒸しケーキなど、温かくやさしい甘さのスイーツにもぴったりです。

気虚タイプの便秘を悪化させること

冷たいスムージーを朝食にする

気虚タイプは脾(消化器系)の働きが弱いため、冷たいものは負担になります。朝から冷たいスムージーを飲むと胃腸が冷えて働きが鈍り、便秘が悪化します。

小食・間食抜きで頑張りすぎる

エネルギー不足の体質に、食事制限は逆効果。気虚タイプは適度にエネルギー源を補うことが必要です。間食はおにぎりや蒸し芋など消化にやさしいものがおすすめ。

激しい運動や夜更かしをする

疲れやすい気虚タイプにとって、ハードな運動や睡眠不足はさらに気を消耗させます。軽いストレッチや早寝早起きで「気」を養いましょう。

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ストレス滞りタイプの便秘(気滞)

「気滞(きたい)」とは、体の中を巡る「気」がスムーズに流れず、滞っている状態を指します。

気はストレスや感情の影響を受けやすく、気滞タイプの方はイライラしやすかったり、ため息が多かったりします。

腸の働きも感情と関係しているため、気の滞りが排便に影響することがあります。

気滞の便秘は、排便の回数が少なく、便意はあるのに出にくい、お腹が張る感じがする、などが特徴です。

気滞タイプの便秘改善におすすめの食材

気滞タイプは、気の巡りをよくする香りのよい食材や、リラックスできる時間を意識的に取りましょう。

おすすめ食材:

  • 柑橘類(オレンジ・ゆず・みかん)、ジャスミン、ミント
  • 玉ねぎ、セロリ、紫蘇(しそ)、香菜(パクチー)
  • 梅、黒酢、陳皮(みかんの皮を干したもの)

香りのよいハーブティーや柑橘を使ったスイーツ、例えばジャスミンゼリーやゆずピール入りの蒸しパンなどもおすすめです。

気滞タイプの便秘を悪化させること

我慢・ストレスを溜め込む

気滞タイプの便秘は、気の巡りの停滞が原因。感情を抑え込んだり、ストレスを我慢すると腸の動きも停滞し、便秘が悪化します。適度に発散することが大切です。

脂っこい・こってりした食事を続ける

油っこい食事は気の巡りをさらに滞らせます。気滞タイプには軽やかで香りのよい食材が合うため、脂や乳製品の多い食事は避けたほうが無難です。

カフェインやアルコールを摂りすぎる

コーヒーやお酒は一時的に気分を上げても、過剰に摂ると気の巡りを乱します。気滞タイプは、ミントティーや柑橘類など自然の香りでリラックスするほうが効果的です。

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血の不足タイプの便秘(血虚)

「血虚(けっきょ)」とは、体を滋養し、潤す「血」が不足している状態を指します。

血は、臓器や肌、髪、腸にも栄養と潤いを与える大切な存在。これが足りなくなると、便が乾燥しやすくなり、スムーズに排出されにくくなります。

血虚タイプの便秘は、便が硬く細い、排便後に疲労感がある、肌や唇の乾燥、めまいなどを伴うことがあります。

血虚タイプは、血を補いながら体を潤す食材を意識的に取り入れましょう。

血虚タイプの便秘改善におすすめの食材

おすすめ食材:

  • 黒ごま、クコの実、干しぶどう
  • レバー、赤身の肉、まぐろ
  • ほうれん草、小松菜、にんじん

ほうれん草のごまあえや、黒ごま入りのきなこクッキー、レーズンとクコの実の蒸しパンなど、鉄分と潤いを同時に補えるおやつに応用するのも◎

血虚タイプの便秘を悪化させること

サラダだけの食事で栄養が不足する

血虚タイプは血を補う栄養(たんぱく質・鉄分など)が不足しがち。生野菜中心の食事では体を冷やす上に、必要な栄養も摂れず、便秘や疲労を悪化させてしまいます。

月経中の冷えや無理なダイエット

生理中は特に血が不足しやすいため、無理な食事制限や体を冷やす行動はNG。温かい料理と適度な栄養補給で「血を養う」ことが大切です。

夜更かしやスマホの見すぎ

目の使いすぎや睡眠不足は「血の消耗」を加速させます。血虚体質は脳や目を休ませる時間をしっかり確保して、質の良い眠りを心がけましょう。

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血の巡りが悪いタイプの便秘(瘀血)

「瘀血(おけつ)」とは、体内の血液が滞り、スムーズに流れていない状態を指します。

瘀血は「血の滞り」。これが腸の働きを妨げ、便秘だけでなく冷えや肩こり、くすみ、経血トラブルなどにもつながることも。

瘀血タイプの便秘は、便が硬く暗い色をしていたり、排便時に痛みや出血が伴ったりすることもあります。

瘀血タイプの便秘改善におすすめの食材

瘀血タイプは、血行を促進し、巡りを良くする食材を取り入れてみましょう。

おすすめ食材:

  • 黒豆、黒きくらげ、なす
  • 玉ねぎ、にんにく、しょうが
  • 紅花、よもぎ、黒酢

黒豆入りの蒸しパンや、玉ねぎと黒酢のマリネ、生姜をきかせた葛湯などもおすすめです。

瘀血タイプの便秘を悪化させること

冷たいものを頻繁にとる

瘀血タイプは血の巡りが悪くなっている状態。冷たい飲食は血行をさらに悪化させ、腸の働きも鈍らせます。温かい飲み物や料理を中心にしましょう。

長時間同じ姿勢で過ごす

デスクワークや座りっぱなしの生活は血の滞りを招きます。特に下半身の巡りが悪くなりやすいため、こまめに立ち上がったりストレッチを取り入れることが大切です。

脂っこい・甘いもののとりすぎ

揚げ物や砂糖の多いスイーツは瘀血を助長します。甘いものを楽しむなら、黒豆や黒ごまなど巡りを良くする素材を使った薬膳スイーツに置き換えるのがおすすめです。

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冷えが原因の便秘(陽虚)

「陽虚(ようきょ)」とは、体を温め、動かすエネルギー(陽気)が不足している状態を指します。

陽気は体を温め、代謝や消化を促す役割があります。これが不足すると、腸の動きも鈍くなり、冷えによる便秘につながるのです。

陽虚タイプの便秘は、便意があまりなく、便がやわらかくても出にくい、お腹が冷えて痛む、手足の冷えを伴うことがあります。

陽虚タイプの便秘改善におすすめの食材

陽虚タイプは、体を内側から温める食材を意識的に取り入れてみましょう。

おすすめ食材:

  • 生姜、ねぎ、にら、にんにく
  • 羊肉、鶏肉、シナモン
  • 黒豆、くるみ、もち米

生姜入りのスープや、シナモンとくるみを使った温かいスイーツなど、内側からポカポカするメニューがおすすめです。

陽虚タイプの便秘を悪化させること

バナナなど、体を冷やすフルーツを食べる

バナナは体を冷やす「寒性」の果物。陽虚タイプは体を温める力が弱いので、バナナでさらに冷やすと腸の動きが鈍くなり、便秘が悪化します。

冷たい飲み物・アイスコーヒーを避ける

冷たい飲食は腸を冷やし、動きをさらに弱めます。特に朝の冷たい水は逆効果。常温または温かい飲み物を選びましょう。

生野菜サラダばかり食べるのも注意

陽虚体質の人には「温かく、加熱された料理」が基本です。冷たい野菜は体を冷やしすぎるので、スープや蒸し野菜に変えましょう。

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余分な水分がたまるタイプの便秘(痰湿)

「痰湿(たんしつ)」とは、体内に余分な水分や老廃物がたまり、巡りが悪くなった状態を指します。

痰湿タイプの便秘は、体が重だるく、むくみやすい、胃腸がスッキリしない感じが特徴。水分代謝が悪く、腸の動きが鈍くなってしまいます。

排便の間隔が長く、便はやわらかいけれど出にくい、またはべたついた便が出ることもあります。

痰湿タイプの便秘改善におすすめの食材

痰湿タイプは、水分代謝を促す食材と、軽やかな生活習慣で体の巡りをサポートしましょう。

おすすめ食材:

  • はとむぎ、冬瓜、とうもろこし
  • 昆布、わかめ、緑豆
  • 大根、もやし、きゅうり

とうもろこし茶や、はとむぎ入りスープ、大根の煮物など、軽くて消化によいメニューがおすすめです。

痰湿タイプの便秘を悪化させること

甘いお菓子やパンを頻繁に食べる

痰湿タイプは体内に余分な水分や老廃物がたまりやすく、甘いものや小麦製品はその「湿」をさらに増やします。便秘が悪化するだけでなく、むくみや重だるさも強くなります。

冷たい飲み物をがぶ飲みする

冷たい飲み物は胃腸の働きを弱め、水分代謝を悪化させます。痰湿体質の人は「温かい飲み物を少しずつ」が基本。とうもろこし茶やはとむぎ茶がおすすめです。

運動不足で汗をかかない

汗をかかない生活は「湿」がたまる大きな原因に。痰湿タイプの便秘改善には、ウォーキングや軽い運動で代謝を上げることが重要です。

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熱と湿気がこもるタイプの便秘(湿熱)

「湿熱(しつねつ)」とは、体内に余分な水分(湿)と熱がこもり、巡りが悪くなっている状態を指します。

湿熱タイプの便秘は、便がネバついて出しにくい、においが強い、排便後もスッキリしないといった特徴があります。

また、体の中の熱が強まるため、口が苦い・口臭・吹き出物・尿が濃い・眠りが浅いなどの症状も見られることがあります。

湿熱タイプの便秘改善におすすめの食材

湿熱タイプは、熱を冷まし、湿をさばく食材を取り入れて、体内をスッキリ整えましょう。

おすすめ食材:

  • 苦瓜、セロリ、トマト
  • 緑豆、冬瓜、白菜
  • はとむぎ、レタス、ミント

緑豆スープや苦瓜とトマトの炒めもの、ミントを加えたさっぱりゼリーなどがおすすめ。夏場や湿度の高い時期には特に役立ちます。

湿熱タイプの便秘を悪化させること

辛いものや揚げ物を食べすぎる

湿熱タイプは体に余分な「熱」と「湿」がこもっている状態。辛いものや脂っこい料理は熱を助長し、便秘や肌荒れを悪化させます。

お酒を毎日飲む

アルコールは体に熱をこもらせ、湿熱を悪化させる代表格。便秘だけでなく、体臭・口臭・吹き出物などの原因にもなります。適量にとどめて。

夜遅くにこってりした食事をとる

夜は消化機能が弱まる時間帯。遅い時間の脂っこい食事は「湿」を溜め込み、朝の便秘や胃もたれに直結します。夕食は軽めを意識しましょう。

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