味でわかる体のサイン「5つの味」で今日から始める薬膳的セルフケア

薬膳では、食材の「味」には体に働きかける力があるとされています。

味の種類は、主に5つ(甘味・辛味・酸味・苦味・鹹味)あるとされていて、この五味(ごみ)をバランスよく取り入れることが、体の声に寄り添いながら健康を保つポイントとされています。

その日の体調や季節に合わせて「どの味を選ぶか」を少しだけ意識してみるだけで、毎日の食事がセルフケアの時間に変わるんです^^

これから、薬膳の基本である五味(甘味・辛味・酸味・苦味・鹹味)をご紹介します。

目次

甘味(かんみ)

お菓子好きな方には嬉しい「甘味」ですが、砂糖などの甘味料は取り過ぎに注意。穀類や芋類、果物といった自然な甘さから摂るのが理想です。

中医学では、甘味には「補益(ほえき)」「和中(わちゅう)」「緩急(かんきゅう)」の作用があるとされています。体力の消耗を補い、疲労や虚弱を改善したり、ストレスや不安感を緩和させたりするほか、筋肉や関節のこわばりを和らげるなど痛みの緩和にも寄与します。

食べすぎると体に余分な水分が溜まりやすくなったり、消化機能を弱めてしまったりします。特に、消化吸収能力が弱っている脾気虚(ひききょ)体質の方は、消化の良い状態で少量ずつ頂くようにしましょう。

甘味が欲しくなる時はこんな状態かも

  • 疲れていてエネルギーが欲しい
  • ストレスや不安で気持ちが落ち着かない
  • 心が満たされず、安心感を求めている
  • 生理前やホルモンバランスが乱れている
  • 胃腸が弱っている

気持ちが落ち気味だったり、胃腸の調子が良くない時は、スイーツよりもかぼちゃやさつまいも、お米などの自然な甘味をとりましょう。
 
お砂糖類の種類や摂り方によっては、急激に血糖値が上がってしまい、血糖値の乱高下(≒精神的的不安定)に繋がるため、調子が悪い時は控えることをおすすめします。

甘味を控えた方が良い時

  • 痰が多く、むくみやすい体質(痰湿)
  • 食べ過ぎ・飲み過ぎで胃腸に負担がかかっているとき
  • 甘いものを食べた後にだるくなる、眠くなると感じるとき

主な食材

米、さつまいも、はちみつ、りんご、かぼちゃ、小麦、とうもろこし、大豆、ジャガイモ、栗、にんじん、氷砂糖、グラニュー糖、筍、山芋、エビ、アジ、キャベツ、さやえんどう、しいたけ etc

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辛味(しんみ)

ピリッとした辛味は、発汗させ、体の巡りや気の滞りを改善する力があります。特に、寒い季節やストレスで気分が沈んでいるときに役立ちます。

中医学では、辛味は「発散(はっさん)」「行気(こうき)」「活血(かっけつ)」の作用があるとされ、風邪の初期や気分の滞り、冷えによる肩こり・頭痛にも有効とされます。

過剰摂取すると発汗しすぎて体液を消耗し、のぼせやむくみ、精神不安定の原因になることがあります。

辛味が欲しくなる時はこんな状態かも

  • 体が冷えている
  • 気分が停滞していてスッキリしたい
  • 外に出るのが億劫で、鬱々としている(気の巡りが悪い)
  • 食欲を刺激したい
  • 肩こりや頭の重さを感じている

汗をかきすぎると逆に体を冷やしてしまうように、辛味の摂りすぎは体を冷やしてしまいます。温め効果を期待する場合には、ほどよく摂りましょう。

    辛味を控えた方が良い時

    • 体が熱っぽく、のぼせやすいとき
    • 肌が乾燥しているとき
    • 多汗や動悸が気になるとき

    主な食材

    生姜、ねぎ、紫蘇、にんにく、こしょう、唐辛子、シナモン、金柑、わさび etc

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    酸味(さんみ)

    キュッと口がすぼまるような酸味には、体内の熱を冷まし、消化を促す働きがあります。また、汗や体液の過剰な消耗を防ぎ、体内の潤いを保つ効果もあります。

    中医学では、酸味には「収斂(しゅうれん)」と「固渋(こじゅう)」「生津(せいしん)」の作用があるとされ、汗や尿、体液の過剰な排出を防いで体の内側を引き締めてくれます。また、体液を作り、免疫を高める働きもします。

    肝の働きをサポートし、イライラや情緒不安定にもアプローチしてくれるため、ストレスを感じやすい人、汗をかきやすい人、唾液の分泌が少ない人、尿が近い人などに有効です。

    酸味が欲しくなる時はこんな状態かも

    • 暑さで体に熱がこもっている
    • 口の中が乾燥している
    • 胃腸の調子が悪く、さっぱりしたものが欲しい
    • ストレスで食欲がない
    • 気分が落ち着かず、イライラしている
    • 発汗が多く体液が不足している

    空腹時に酸の強いものを摂ると胃を荒らしてしまうため、食べるタイミングに注意しましょう。

    酸味を控えた方が良い時

    • 胃が弱く、冷えやすい
    • 血行不良の時
    • 肩こりや頭の重さを感じる

    主な食材

    梅、レモン、みかん、酢、トマト、ヨーグルト、ざくろ、あんず、ぶどう、キウイ etc

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    苦味(くみ)

    苦味には、体にこもった熱を冷まし、余分な水分を取り除く力があります。消化機能を助けたり、心の緊張を和らげることでストレス軽減にもつながります。

    中医学では、苦味は「清熱(せいねつ)」「燥湿(そうしつ)」「健胃(けんい)」といった働きがあるとされ、特に夏場の体のだるさや、湿気による体調不良に有効です。また、心の働きを整えるとされ、イライラや動悸、不眠などにも役立ちます。

    ただし、苦味の摂りすぎは胃腸に負担をかけたり、気を消耗させて疲れやすくなることもあるため、体力が低下している時や気虚体質の方は注意が必要です。

    苦味が欲しくなる時はこんな状態かも

    • 食べ過ぎて胃がもたれている
    • 暑さで身体がだるい
    • 気分がイライラして落ち着かない
    • 肌荒れや吹き出物が気になる

    苦味を控えた方が良い時

    • 胃腸が弱く、冷えやすい
    • 体力が低下している
    • 乾燥が気になる
    • 食欲が落ちている

    苦味には体液(例:胃液や唾液)の分泌を抑えてしまう作用があるため、食欲がない時に摂ると、さらに食欲を低下させることがあります。

    主な食材

    ゴーヤ、ふきのとう、緑茶、コーヒー、ごぼう、銀杏、ヨモギ、菊花、魚や豚などの内臓類、ビールなど苦みの強い酒 etc

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    鹹味(かんみ)

    「しょっぱい」味の鹹味は、便秘の改善や利尿作用に優れています。体の中にできた「塊(かたまり)」を柔らかくする働きもあるため、慢性的な症状や老廃物の排出に役立ちます。

    中医学では、鹹味は「軟堅(なんけん)」「散結(さんけつ)」という作用を持ち、特に固まったものを柔らかくし、しこりや結石などにも使われる他、気持や熱などを鎮静化する作用があります。

    また、腎と関わりが深く、体を温める食材と組み合わせることで腎機能の補助にもなります。ただし、過剰に摂取すると体内の水分バランスが崩れ、高血圧やむくみの原因となるため要注意です。

    鹹味が欲しくなる時はこんな状態かも

    • 汗をかいたあとで塩気が欲しい
    • 体がだるく、排泄機能が鈍っている
    • 老廃物がたまっている
    • 便秘が続いている

    鹹味を控えた方が良い時

    • 高血圧
    • 腎臓に負担がかかっている
    • 水分をため込みやすく、体が浮腫んでいる

    鹹味は腎をサポートする反面、摂りすぎると血圧が上がったり腎臓の機能を損なう場合があります。

    主な食材

    味噌、醤油、昆布、ひじき、しらす、塩、タコ、イカ、カニ、海苔、シジミ、牡蠣、糠漬け etc

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    番外編:「淡味」と「渋味」の働き

    薬膳で基本となる五味(甘味・辛味・酸味・苦味・鹹味)に加えて、知っておくと役立つのが“淡味(たんみ)”と“渋味(じゅうみ)”です。

    これらは中医学の文献や実践の中で補足的に扱われることがあり、体の調整やケアに深く関わっています。

    淡味(たんみ)

    淡味は、味が薄く目立たないシンプルな味です。一見地味ですが、体に溜まった余分な水分や老廃物を排出する「利水滲湿(りすいしんしつ)」の働きがあり、むくみや下痢、湿気によるだるさの改善に効果的です。

    また、胃腸を穏やかに整え、疲れているときや体力が落ちているときに負担をかけずに栄養を補給できます。

    主な食材:冬瓜、はとむぎ、白きくらげ

    渋味(じゅうみ)

    渋味は、舌をキュッと締めつけるような味で、収れん作用(体を引き締める働き)があります。中医学では「固渋(こじゅう)」といい、汗・尿・便などの過剰な排出を抑える働きや、出血や分泌過多の抑制にも用いられます。

    特に、止汗、止瀉(下痢止め)、止血、精の漏れを防ぐといった用途で重宝され、体の内側からの漏れを「閉じる」サポートをします。

    おすすめ食材:柿、カシス、かりん、グアバ、ざくろ、梅、レンズ豆、銀杏、蓮の実、けしの実

    目次