薬膳や漢方に触れていると、よく目にする「中医学」と「東洋医学」という言葉。
なんとなく似ているように思えて、「違いがよくわからない…」「薬膳はどっちに属するの?」と疑問を感じたことはありませんか?
この記事では、中医学と東洋医学の違いを丁寧に整理しながら、薬膳がどこに位置づけられるのかをやさしく解説します。
東洋医学とは?
東洋医学は、アジア地域で発展してきた伝統医学全体を広く指す言葉です。
具体的には、中国・日本・韓国・チベット・インドなどの医療思想や実践が含まれており、
- 中国の「中医学」
- 日本の「漢方医学」
- 韓国の「韓医学」
- インドの「アーユルヴェーダ」
などがその代表例です。
つまり、東洋医学という言葉は、「中医学」を含みつつ、それよりも広い枠組みを指す、文化的・地理的な総称なのです。
中医学とは?
中医学(ちゅういがく)は、中国で古代から受け継がれてきた伝統医学をベースに、現代中国で国家的に体系化された医学のことをいいます。
中医学では、以下のような理論と実践が体系的に整備されています:
- 陰陽五行
- 気・血・津液のバランス理論
- 臓腑学説(五臓六腑)
- 診断法(四診)と弁証論治
- 治療法(鍼灸・漢方薬・推拿・気功・薬膳など)
医学的理論として非常に整っており、現在でも中国や台湾では正式な医学として、現代医学と並行して使われているのが大きな特徴です。
陰陽五行論は中医学?東洋医学?

ここで、薬膳の土台にある「陰陽五行論」と東洋医学、中医学の関係もご紹介します。
陰陽五行は東洋医学全体の共通の土台
「東洋医学」という大きな枠組みの中では、陰陽五行説が共通の土台として用いられています。
この理論は、以下のようなアジアの伝統医学に共通して応用されています:
- 中医学(中国)
- 漢方医学(日本)
- 韓医学(韓国)
つまり、陰陽五行は東アジアの伝統医療に広く共通して根づいている理論なんですね〜。
中医学では「医学理論」として体系的に応用
中医学では、この陰陽五行説をさらに深く掘り下げて、次のような実践的な医学理論に組み込んでいます。
- 臓腑(内臓の働き)
- 気・血・津液(水分の循環とバランス)
- 病因(外からの邪気や内的な原因)
- 診断・治療の指針(四診や弁証論治)
このように、中医学は陰陽五行を“医学として”運用するための、より実践的で理論的な構造を持っているといえます。
中医学と東洋医学の違いをまとめると
項目 | 東洋医学 | 中医学 |
---|---|---|
範囲 | アジア全体の伝統医学の総称 | 中国で体系化された伝統医学 |
内容 | 中医学・漢方・韓医学などを含む | 陰陽・五行・臓腑などを用いた治療体系 |
位置づけ | 文化・歴史的な枠組み | 国家的に定義された医学システム |
対象国 | 中国・日本・韓国・チベットなど | 主に中国本土(世界的に普及) |
このように、東洋医学は「広い傘」、中医学は「その中のひとつ」であり、中医学は“具体的な医学体系”、東洋医学は“地域の伝統的な医療文化”というイメージで捉えるとわかりやすいです。
薬膳は東洋医学?中医学?
薬膳は、中医学の中にある「食養生」の分野です。
中医学には「鍼灸」「漢方薬」「推拿(マッサージ)」などさまざまな治療法がありますが、
その中で、日々の食事で体を整える方法として発展したのが「薬膳」です。
つまり薬膳は、東洋医学の中の「中医学」に属する、医食同源の実践法といえるのです。
薬膳の位置づけ
- 東洋医学 → 中医学 → 栄養学・食養生 → 薬膳
薬膳では、中医学の考え方(気・血・陰陽・五臓六腑)を用いて、
- その人の体質や季節の状態に合わせた食材選び
- 調理法(温める・冷ます・巡らせる)
- 臓腑別の働きに対応した献立
などを行い、食を通して健康を整える「日常の医学」として親しまれています。
薬膳は誰もができる実践法
東洋医学と中医学は、一見似たような言葉に見えますが、
- 東洋医学=文化・地域を含む広い枠
- 中医学=中国で体系化された医学の理論と実践
というふうに捉えると、その中にある薬膳の立ち位置も自然と見えてくるのではないでしょうか。
薬膳を深めたい方にとって、中医学の理解はとても大切。
体質を見立てて、季節に合わせて、内側から整える。そんな知恵を支えているのが中医学です^^