
痰湿(たんしつ)とは、体内に滞った “余分な水分・老廃物” が、気・血・津液の流れを妨げている状態。
東洋医学でいう「水(すい)」の代謝がうまくいかず、体に “にごり” が生まれているイメージです。
この“痰湿”は、目に見える「むくみ」や「だるさ」だけでなく、気分の重さ・集中力の低下・眠気・便秘・肥満など、幅広い不調につながります。
とくに脾(ひ)=消化吸収をつかさどる臓器が弱っていると、痰湿が溜まりやすくなります。
「食べたものがエネルギーにならない」「出す力が弱い」という方は、痰湿タイプの可能性が高いです。
痰湿タイプによく見られる症状
- 身体が重だるい/いつも眠い
- むくみやすい(特に下半身)
- 痰がからみやすい/鼻がつまる
- めまい・頭が重い感じがする
- 舌に白くて厚い苔がある
- 胸やお腹がつかえる・ゲップ・お腹の張り
- 軟便・便秘・ガスがたまりやすい
- 湿気が多いと体調が悪くなる
- 気分が沈む/やる気が出ない
- 太りやすい/ダイエットしても落ちにくい
「やる気が出ない」「だるい」など、目に見えない不調も多い痰湿タイプ。
無理にがんばらず、少しずつ“ためこまない体”をつくっていきましょう。
痰湿の主な原因
胃腸の弱り(脾の働き低下)
消化吸収と水分代謝を担う「脾(ひ)」の働きが弱ると、水はけが悪くなり、痰湿がたまります。
暴飲暴食、冷たいもののとりすぎ、早食いなどは要注意。
運動不足・発汗不足
汗をかく機会が少ないと、水分代謝が滞り、体内に余分な湿気がたまります。
「動かないこと」が、さらに“重だるさ”を加速させます。
湿気の多い環境
梅雨どきや低気圧の影響を受けやすい人は、外からの“湿”の影響で痰湿が悪化しやすくなります。
甘いもの・冷たいもののとりすぎ
砂糖、小麦、乳製品、アイスや冷たいドリンクは、湿を生みやすい食品。
食後に眠くなる・お腹が張る人は、痰湿の蓄積かも。
痰湿タイプと五臓の関係

痰湿体質の根本には「脾(ひ)」と「肺(はい)」の弱りが深く関わっています。
また、五行で見ると「土(脾)」「金(肺)」「水(腎)」のバランスが関係します。
脾(ひ)
痰湿の根本原因。
脾が弱ると、湿がうまく排出されずに体にたまります。
胃もたれ、だるさ、軟便なども脾のサイン。
肺(はい)
肺は水分代謝をコントロールし、痰の発生にも関係。
鼻水・痰・むくみが出やすい人は肺の働きの低下が関係していることも。
腎(じん)
腎は「水を調整する」源。
年齢を重ねてむくみやすくなった人、代謝が落ちた人は腎のサポートも必要です。
痰湿は、見た目の変化よりも“体の重さ・詰まり”として現れるため、気づいたときからしっかりケアしていくことが大切です。
痰湿タイプにおすすめの食養生
痰湿体質を整えるには、「余分な水分を出す力」「脾(ひ)=胃腸の働きを高める力」を同時に育てることが大切です。
そのために意識したいのは、「温める」「乾かす」「香らせる」食材。
湿を追い出すことに加え、湿を“ためこまない体質”に整えていきましょう。
「温める」「乾かす」「香らせる」が基本
働き | 食材 |
---|---|
水はけをよくする | はと麦、とうもろこし、冬瓜、大根、きゅうり |
脾を助ける | 山芋、かぼちゃ、にんじん、もち米 |
香りで巡らせる | しそ、みょうが、三つ葉、陳皮(みかんの皮) |
消化促進 | しょうが、にんにく、ねぎ |
痰湿の改善に向けたメニュー例
- はと麦ともち米の薬膳粥
- とうもろこしと冬瓜のスープ
- 大根としその香り炒め
- 山芋とにんじんの蒸し煮
- みょうがと陳皮のさっぱり和え
避けたい食べもの
- 冷たいもの(アイス・冷水・生野菜中心の食事)
- 乳製品・小麦・白砂糖を多く含むお菓子・パン
- 揚げ物・こってり系・加工食品
「余分なものを入れない」「湿を出す力をつける」ことを、日々の食事でコツコツ意識していきましょう。
痰湿タイプにおすすめの過ごし方
痰湿タイプの生活養生のテーマは、動いて、吐いて、乾かす。
体の中の「余分な水分」をためこまないライフスタイルを心がけていきましょう。
おすすめの習慣
- 朝の軽い運動: ラジオ体操・ストレッチ・5分歩くだけでも◎
- 深い呼吸: 湿をはき出すイメージで、長めの吐く呼吸を意識
- よく噛んで食べる: 胃腸への負担を減らし、代謝を助ける
- 湯船に浸かる: 汗ばむ程度の入浴で、余分な湿を追い出す
- 室内除湿・換気: 湿度の高い環境ではこまめな換気を
また、考えすぎ・感じすぎで「気持ちが詰まっている」ことも、湿の停滞に関係する場合があります。
“動くことでめぐらせる”を習慣にしていきましょう。
痰湿は “ためこみすぎ” のサイン
痰湿タイプは、体に「余分なものをためこみやすい」状態。
それは、水分・老廃物だけでなく、感情、情報、付き合い、がまん、思い込み… かもしれません。
「動きたいけど動けない」
「軽くなりたいのに、しんどい」
そんなときは、まずひとつ、余分なものを手放してみてください。
カバンの中身を減らす。
SNSを開かない夜をつくる。
ひとつ食材を減らして、シンプルなごはんにしてみる。
体が軽くなると、心も不思議と動き出します。
めぐらせることは、気持ちを「新しくする」ことでもあるのです。