
中医学における「気滞(きたい)」とは、生命活動の源となる「気(エネルギー)」の流れがどこかで詰まっている状態です。
本来、気は体と心の中を絶えず流れ、消化、呼吸、血流、免疫、感情の安定などをサポートしています。
しかし、その“気”が滞ると、心にも体にもさまざまな不調があらわれてくるんです。
気滞は、特に感情を抑え込むことで起こりやすいとされており、現代人に非常に多い体質。
特に感情を抑え込みやすい人や、人の顔色を見てしまう人は要注意。放っておくと、便秘・PMS・胃腸の不調・自律神経の乱れへとつながることもあります。
「本当は悲しいけど我慢している」
「怒りたいけど抑えている」
このように自分の感情に蓋をしていると、気の流れはどんどん停滞してしまいます。
気滞の人に多く見られる症状
- ため息をよくつく
- 気分にムラがある/情緒が不安定
- お腹が張る/ガスが溜まりやすい
- 胸やのどが詰まる感じがする
- イライラしやすい/怒りっぽい
- ストレスで胃腸が弱る
- 生理前に気分が落ち込む
- 便秘と下痢を繰り返す
- 緊張すると吐き気がする
- 人間関係に疲れやすい
「なんとなく心が重い」「気分が上がらない」そんな状態も、気滞のサインかもしれません。
気滞になる原因は?〜感情と生活習慣〜
感情の抑圧
気滞の最大の原因は、「怒り・悲しみ・不安・不満」などの感情を抑え込むことです。
とくに「怒り」は気を一気に詰まらせる作用があるとされ、我慢し続けると巡りを止めてしまいます。
長時間のストレス状態
仕事、育児、人間関係、SNS…。日々の小さなストレスが蓄積すると、無意識のうちに呼吸が浅くなり、気の流れも滞ってしまいます。
運動不足・姿勢の悪さ
デスクワークやスマホ時間が長く、呼吸や血流が滞っていると、気の巡りも悪化します。
香りのない暮らし
気は香りによってめぐりやすくなるといわれています。反対に、香りを感じることのない単調な生活は、気滞を悪化させる一因に。
気滞と関係の深い「肝(かん)」と五行

五臓のうち、「肝(かん)」は気の流れを調整し、感情をコントロールする働きを持ちます。
肝の働きが滞ると、イライラ、怒りっぽさ、情緒不安定、生理不順などが起こりやすくなります。
また、五行でいう「木」は、肝に対応しており、のびやかに成長するイメージが特徴。
この“木”の気が滞ると、成長したいのに動けない、感情が膨らみすぎるなどの傾向になります。
気滞の改善には、「肝」の働きをのびやかにする生活と、感情を受けとめることがとても大切です。
気滞タイプにおすすめの食養生
気滞体質の改善には、気の流れをスムーズにする「香りのある食材」と「少しの酸味」を上手に取り入れるのがポイントです。
また、気を滞らせやすい脂っこいもの・甘いもの・冷たいものは控えめに。シンプルで香りのある献立が、心身の詰まりをゆるめてくれます。
おすすめの食材
ジャンル | 具体例 |
---|---|
香味野菜 | しそ、みょうが、三つ葉、セロリ、パクチー |
柑橘類 | ゆず、夏みかん、レモン、かぼす |
酸味系 | 黒酢、梅干し、ザワークラウト |
豆類 | 納豆、黒豆、大豆製品 |
消化を助ける | はと麦、もち麦、陳皮(みかんの皮) |
気滞の改善に向けたメニュー例
- しそと梅の炊き込みご飯
- 夏みかんと豆腐のサラダ
- セロリと黒酢のさっぱり炒め
- みょうがと長芋の味噌汁
- 納豆と三つ葉のおひたし
控えたい食材
- 過剰な油(揚げ物・クリーム系)
- 甘いお菓子・白砂糖・小麦中心のパン
- 冷たい飲み物・生野菜ばかりの食事
香りのあるものをひとつ足すだけで、食事は“めぐらせる食養生”になります。お好みのハーブや柑橘で、まずは一品から取り入れてみましょう。
香り・巡りを活かした暮らし方
気滞タイプにとって、心と体を動かす“きっかけ”を日常に散りばめることがとても大切です。
とくに有効なのが、呼吸・香り・音・リズム。小さなことでも「気が動く感覚」を取り戻すことが、気滞改善の鍵になります。
おすすめの習慣
- 朝の深呼吸: 窓を開けて新鮮な空気を吸い、気を動かす
- アロマの活用: ベルガモット・スイートオレンジ・レモングラスなど
- 声を出す: ハミング・歌・独り言でもOK。声は気を巡らせる
- リズム運動: ウォーキング・ダンス・軽い体操
- 感情の表現: 泣く、書き出す、誰かに話すなどの発散も◎
「なにもしない」と決める時間や、意識して笑顔をつくることも、実は気を動かす立派なセルフケア。
1日3分でもいいので、気持ちがめぐる“余白”をつくってみましょう。
気滞は “感情の詰まり” のメッセージ
気滞は、「本音を置き去りにしてきたこと」によって、心と体のめぐりが止まっているサインです。
「言いたかったけど言えなかったこと」
「ほんとはやりたくなかったこと」
「無理に笑っていた日々」
そんな感情が積もると、気はどんどん滞っていきます。
でも、それに気づけたあなたはもう大丈夫。
自分の気持ちに気づき、それを尊重しはじめた瞬間から、めぐりは少しずつ動き出します。
香り・音・呼吸・リズムを通じて、自分の心とつながる時間を大切にしていきましょう^^