
「湿熱(しつねつ)」は、体の中に “余分な水分(湿)” と “こもった熱(熱)” が同時にたまっている状態です。
代謝がうまくいかず、熱が発散されないまま体の中にこもってしまっているため、吹き出物や皮脂トラブル、体臭・口臭、尿の濃さ、イライラ感など、さまざまな不快なサインが出やすくなります。
原因は、単に “食べすぎ” や “冷たいもの” に限らず、ストレス・睡眠・環境など、生活のさまざまな要素が関係しています。
体に現れるサインを見逃さず、五臓を整えながら、じわじわ溜まった湿熱をやさしく外へ出していきましょう。
湿熱タイプによく見られる症状
- 肌がベタつきやすい/ニキビ・吹き出物ができやすい
- 汗をかいてもスッキリしない
- 体臭・口臭が気になる
- 尿が濃く、においが強い
- おりものが多い/においが気になる
- 舌に黄色い苔がある
- 胃がムカムカ/下痢ぎみ
- 顔が赤くなりやすい/のぼせる
- イライラ・落ち着かない
- 脂っこい食べ物やお酒が好き
湿熱の主な原因
脂っこい食事や甘いもの、刺激物の摂りすぎ
東洋医学では、脂っこいもの・甘いもの・辛いものは“湿”や“熱”を生みやすい食材群とされます。
- 脂っこい食事 :
消化が遅れ、体内に「湿(余分な水分・油分)」が溜まりやすくなる。
- 甘いもの:
消化器に負担をかけ、「痰湿」の原因に。
- 辛い刺激物:
一時的に熱を発散するが、体を冷ます水も一緒に発散してしまい、結果的に「内熱(ないねつ)」を生む。
また、脂質・糖質・化学調味料が多用され、味が濃く、塩分や香辛料も強めな外食やコンビニ食が多い生活も、湿熱体質の原因です。
お酒や冷たい飲み物の摂りすぎ
アルコールは「湿熱を助長する」代表格。特にビールや甘いお酒は体内に湿も熱も残します。
また、冷たいものは一見さっぱりしますが、脾胃を冷やすことで “内熱” と “湿” が同時にたまる原因になります。
湿気の多い場所に住んでいる/梅雨の時期
中医学では「外湿(がいしつ)」という考えがあり、外界の湿気が体内に入り込みやすい体質があります。
また、梅雨などの高湿度の時期、湿熱タイプは体の中にすでに湿がたまりやすいため、「外湿」と「内湿」が合体し症状が悪化しやすいです。
ストレス
東洋医学では、ストレスや抑圧された感情は「肝(かん)」に影響すると考えられています。肝の働きが乱れると、気の巡りが悪くなり、“熱” がこもりやすくなります。
さらに、ストレスが「脾」を弱らせることで消化力も低下し、”湿” がたまりやすくなります。
湿熱タイプと五臓の関係

「湿」と「熱」はどちらも“こもる性質”を持ち、この2つが重なることで、体内の気・血・水の流れが停滞し、トラブルが起きやすくなります。
特に、「肝(かん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」など、消化・排泄に関わる臓腑に負担がかかりやすく、皮膚や粘膜にも影響が出やすいのが湿熱タイプの特徴です。
肝(かん)=気と感情のめぐりを司る
肝は、気の巡りや感情、血の調整を担います。ストレスや怒りをため込みやすい人、イライラしやすい人は、肝に熱がこもっているかもしれません。
この「肝火(かんか)」が湿と結びつくと、ニキビ、目の充血、女性の月経トラブルなどにつながることもあります。
脾(ひ)=湿をさばく力の中心
脾は、飲食物の消化吸収だけでなく、水分代謝も担う重要な臓。
冷たいものや甘いもの、外食などの食習慣で脾が弱ると、水分がうまく巡らず、体に“湿”が溜まっていきます。
その湿が熱と結びつくと、「脾胃湿熱(ひいしつねつ)」となり、胃もたれ、舌苔のべたつき、だるさ、下痢などの不調に繋がります。
肺(はい)=湿熱がたまりやすい“上半身”の門
肺は呼吸器や皮膚を通じて外界とつながり、体の表面を守る役割もあります。
湿熱が肺にこもると、咳や痰、鼻の不調だけでなく、顔や背中のニキビ、肌のべたつきといったトラブルが。
特に、湿気が多い季節や冷房の効いた室内で悪化する場合は、肺の湿熱が影響している可能性が高いです。
腎(じん)=水の調整と排泄を支える臓
腎は、体の水分を調整し、排泄や生殖機能を担います。
湿熱が腎に影響を与えると、膀胱や婦人科の不調として現れやすくなります。
おりものの増加、尿のにおい、頻尿、デリケートゾーンのトラブルなどは、「下焦湿熱(かしょうしつねつ)」のサインかもしれません。
湿熱体質におすすめの食欲状
湿熱タイプは、
- 体の中にたまった余分な水分や熱を“抜く”
- 食生活を見直して、消化力をサポートする
- ストレスケアと心の“熱”を静める
が大切です。
とはいえ完璧を目指すのではなく、徐々に生活に取り入れていきましょう。
ポイントは「湿」と「熱」のダブルケア
働き | 食材 |
---|---|
利湿(余分な水分を出す) | はと麦、とうもろこしのひげ茶、冬瓜、きゅうり、緑豆、あずき |
清熱(体の熱を冷ます) | セロリ、トマト、苦瓜(ゴーヤ)、菊花、ミント、緑茶 |
消化を助ける | 山査子、陳皮、レモン、梅干し、生姜(少量) |
湿熱の改善に向けたメニュー例
- セロリと陳皮のスープ
- みょうがの雑穀おにぎり
- 鶏むね肉と冬瓜の煮込みスープ
- ゴーヤとしらすの梅ポン酢和え
- あさりと豆腐の酒蒸し
- 青菜とトマトのお浸し
- ミントと菊花のハーブティー
控えたいもの
- 脂っこい揚げ物、スナック菓子
- 甘すぎるもの、アイス、冷たい飲み物
- アルコール類、辛い刺激物
- 乳製品・チーズ・ヨーグルト(※過剰な場合)
湿熱タイプにおすすめの過ごし方
湿熱タイプの生活養生のテーマは、出して、冷まし、すっきり整える。
体の中にたまった“湿”と“熱”をため込まないよう、巡らせて、外へ出す習慣を意識していきましょう。
おすすめの習慣
- 香りを取り入れる: ミント・柑橘・しそなど、巡りを助ける香りを食事やお茶に
- 軽めの半身浴 or 足湯: 湿を外へ出し、こもった熱を静めるにはぬるめのお湯でリラックス
- 朝の白湯 or 緑豆茶: 起きがけに、体にこもった湿熱を流すような温かい一杯を
- 軽い運動:気分転換を目的にしたウォーキングやストレッチが◎
- 通気・除湿: 湿気の多い場所では、朝夕の換気や除湿機で環境もクリアに
- 夜のスマホ時間を短く: 熱をこもらせる原因に。早めに照明を落とし、心もクールダウンを
湿熱タイプは「すっきり心地よく」がカギ!
湿熱タイプは感情の高まり(イライラ・焦り)や思考の渦から、熱がこもりやすい傾向もあります。
“すっきり心地よく過ごす”ことそのものが、湿熱を整えるケアになります。
香り・音・風・緑…五感をやさしく刺激する時間を持ちながら、体の中にたまったものを「流す・鎮める・手放す」。
この3つを意識することで、体の内側から軽く・涼やかになっていきます。
がんばりすぎず、まずは一つずつ、「不要なものを手放す」習慣から始めてみましょう。