
鶏卵は、生命の源となる栄養が詰まった優秀な食材です。滋養強壮・血を補う・心を落ち着ける などの働きを持ち、体質や食べ方次第でより効果を引き出せます。
- ほてり、喉の乾き、寝汗(陰虚)
→身体の潤いを養いながら炎症をやわらげる。
- 不眠・ストレス・情緒不安定
→「心」を養う作用があり、気持ちの安定や睡眠サポートに有効。
- めまい、顔色が悪い、ふらつき(血虚)
→卵黄には血を補う働きがあり、栄養豊富で養血に◎
- 成長期の子ども/高齢者の体力低下時
→補気・補血・滋陰の三拍子が揃っていて、消化にも比較的優しい。
- 妊娠中・産後の回復期
→気血の補充が必要な時にぴったり。消化の良い調理法(蒸し卵など)で摂取を。
- 脂っぽいニキビ、口臭、便臭が強い(湿熱)
→卵は栄養が豊富な分、内にこもった湿熱を悪化させやすい。
- 胃もたれ、胸やけ、痰が多い(痰湿)
→消化が重く、体内に余分な「湿(老廃物)」をためやすい可能性あり。
- イライラ、目の充血など、ストレスで熱がこもりやすい
→卵の滋養力が裏目に出て、熱症状を助長する可能性あり。
- 卵アレルギー、アトピー体質
→卵白に反応するケースがあり、皮膚症状を悪化させることも。
※胃腸が弱い人は、冷たいまま大量摂取すると胃腸を冷やす可能性があるため、温めて飲むのがおすすめです。
鶏卵の効能
主な効能
- 滋陰(じいん):
体の水分や潤いを補い、乾燥を防ぐ。
- 養血(ようけつ):
血を補い、スムーズに巡らせる。
- 養心安神(ようしんあんしん):
精神を安定させ、リラックスさせる。
- 補腎(ほじん):
腎の機能を高め、エネルギーを蓄え、生命力を強化する。成長や老化予防に◎
- 安胎(あんたい):
妊娠中の母体を安定させ、流産のリスクを減らし、胎児の健やかな成長を助ける。
帰経(主に作用する臓器)
- 肺:肺を潤し、咳や喉の乾燥を防ぐ。
- 心:精神を安定させ、リラックスを促す。
- 脾胃:脾・胃の働きを助け、消化を促す。
※生食の場合は消化が悪くなるため注意。
- 腎:生命力を補う。
薬効データ
- 性味:平性(体を冷やしも温めもしない性質)
- 五味:甘味(補う)
食材データ(旬・選び方・おすすめの季節)
- 旬:通年
現在は鶏舎の温度・湿度・照明管理が整っており季節に左右されにくいが、自然な飼育環境における卵の旬は春(3〜5月)と秋(9〜11月)
- 選び方:
殻の表面がきめ細かく、なめらかで光沢があるもの。
割った時に白身と黄身にハリがあって、こんもりと盛り上がっているもの。
- おすすめの季節:秋〜春
特に冬におすすめ。補腎・滋陰・養血作用があり、寒さで弱りがちな体を内側から整えてくれます。温かい調理法で取り入れると、胃腸にもやさしい。また、春は肝を補い精神を安定させ、秋は乾燥対策として潤いを補う働きが活きる。
栄養学的な特徴
- 良質なタンパク質:
筋肉・皮膚・髪の健康的に維持してくれる。
卵はアミノ酸スコア100で、必須アミノ酸9種類をすべて含んでいる。
卵のタンパク質は加熱すると胃腸にかかる負担も少なくより効率よく消化吸収できる。
- 鉄分・ビタミンB12:貧血予防に◎
- レシチン:記憶力UP・脳の活性化に◎
- ビタミンA:目や粘膜を守り、免疫力UPに◎
- ビタミンD:骨を丈夫にする。
食べ合わせ
「相性が良いからたくさん食べても良い!」「相性が悪いから、絶対食べちゃダメ!」
というわけではなく、その時の食べる人の体質に合わせて調整することがポイントです。
卵と相性の良い食べ合わせ
- ほうれん草:血と潤いを補ってくれる。貧血・目の疲れに◎
- トマト:補血・清熱・美肌。卵の滋養に酸味でバランスも◎
- 黒ごま:腎を養い、便秘も改善。アンチエイジング&美髪に◎
- くるみ:腎を養い温めてくれる。卵の潤い作用と合わさって「冷え対策」に◎
- 黒豆・なつめ:血を補い、心身を落ち着かせてくれる。疲労やストレスに優しく寄り添う組み合わせ。
- 米麹甘酒:気と潤いを補う組み合わせ。卵と一緒に栄養の消化吸収UP!
- さつまいも:胃腸を助け、卵の重たさをやわらげる。便秘にも◎
- 玉ねぎ:卵で血を補い、玉ねぎでの巡りを良くしてくれる。
卵と相性の悪い食べ合わせ
- スイカ・メロンなど冷性果物:
卵は体を冷やすわけではないが、冷性果物と一緒に摂ると消化に負担が。特に胃腸が弱い人は注意。
- にんにく:
体に熱をこもらせやすく、卵の潤いを補う作用と反発。辛味+高熱性なので、熱がこもりがち人はほどほどの量で。
- カフェイン飲料:卵の鉄分やビタミン吸収を妨げる可能性がある。摂取は30分〜1時間ずらすのが◎
- お酒:卵の消化に負担がかかり、肝の働きを妨げることも。二日酔いの時は避けた方が◎
症状別⭐︎簡単レシピ
どの体質でも、消化吸収が良くなるため加熱して食べるのがおすすめです。
貧血、冷え、疲れやすい、生理不順
ほうれん草の温泉卵のせ
材料(2人分)
- ほうれん草 … 1/2束(約100g)
- 温泉卵 … 2個
- 高野豆腐 … 1枚
- 切り干し大根 … 10g
- 黒すりごま … 大さじ1
- 醤油 … 小さじ1
- ごま油 … 小さじ1
- ほうれん草はさっとゆでて、水にとってから水気を絞り、4cmほどの長さに切る。
- 高野豆腐はぬるま湯で戻して水気をしぼり、細かく刻む。
- 切り干し大根も水で戻して刻み、さっと熱湯をかけてアク抜きする。
- フライパンにごま油を熱し、高野豆腐と切り干し大根を軽く炒める(約2分)。
- 火を止めて、醤油と黒すりごまを加えて全体を混ぜる。
- 器にほうれん草を敷き、その上に炒めた具材をのせる。
- 温泉卵をそっとのせて完成!
ふわとろ山芋のだし巻き卵
材料(2人分)
- 卵 … 2個
- 山芋(すりおろし)… 50g
- だし汁 … 50ml
- みりん … 小さじ1
- しょうゆ … 小さじ1/2
- 油 … 適量
- ボウルに卵を割り入れ、山芋、だし汁、みりん、薄口しょうゆを加えてよく混ぜる。
- フライパンに油を薄くひき、中火で温める。
- 卵液を少量流し込み、半熟状になったら奥から手前に巻く。
- 残りの卵液も数回に分けて流し込み、繰り返し巻く。
- 食べやすい大きさに切って器に盛る。
のぼせやすい、乾燥が気になる、寝つきが悪い
豆乳と蜂蜜のふるふる卵プリン
材料(2個分)
- 卵 … 1個
- 豆乳 … 150ml
- はちみつ … 大さじ1
- バニラエッセンス … 少々
- 卵を溶き、豆乳、はちみつ、バニラエッセンスを加えて混ぜる。
- ザルでこして滑らかにする。
- 耐熱容器に流し、フライパンで蒸し焼き(弱火で10分)。
- 粗熱を取り、冷蔵庫で冷やして完成!
トマトとふわふわ卵のスープ
材料(2人分)
- トマト … 1個
- 卵 … 1個
- 鶏ガラスープ … 400ml
- 塩 … 少々
- ごま油 … 小さじ1
- トマトを湯むきしてざく切りにする。
- だし汁を温め、トマトを加えて煮る。
- 溶き卵を入れ、ふんわり固める。
- 塩で味を整え、ごま油を加えて完成!
肩こり、冷え、シミ、目の下のくまが気になる
生姜でぽかぽか♪味噌卵スープ
材料(2人分)
- 卵 … 1個
- 生姜 … 1かけ(すりおろし)
- 味噌 … 大さじ1
- だし汁 … 400ml
- ねぎ … 適量
- ごま油 … 小さじ1
- だし汁を温め、すりおろした生姜を加える。
- 味噌を溶き、溶き卵をゆっくり回し入れる。
- ねぎとごま油を加えて完成!
製菓材料としての卵
卵は、製菓において「生地をふくらませる」「コクとしっとり感を与える」「生地をつなぐ」といった重要な役割を担う、基本材料のひとつです。
卵一つでお菓子の食感や仕上がりに大きな違いが生まれるため、非常に繊細な素材でもありますが、正しく使うことで、優しくしっとりとしたお菓子ができます。
また、温めると胃腸にも負担が少なく消化吸収が良いため、体調が不安定なときやエネルギー補給をしたいときにも適しています。
製菓における卵の3大特性
起泡性(きほうせい)
卵白を泡立てると、空気を抱き込んでメレンゲになり、生地をふわっと軽く膨らませる力を持ちます。
新鮮な卵白ほど起泡性が高いが、泡立てすぎると生地と混ざりにくくなるので注意。
メレンゲは砂糖を加えて安定させながら立てるとうまくいきやすくなります。
起泡性を活用した代表的なお菓子:スポンジケーキ、シフォンケーキ、スフレ、マカロン
乳化性(にゅうかせい)
卵黄は油と水を混ぜ合わせる乳化作用を持っており、本来混ざりにくい油分と水分を安定して一体化させます。
乳化がうまくいくと生地がなめらかに均一になり、コクとしっとり感が出ます。特に「バター+卵+粉」の順番で丁寧に混ぜると乳化がスムーズ◎
乳化性を活用した代表的なお菓子:カスタードクリーム、バターケーキ、クッキー
熱凝固性(ぎょうこせい)
卵は加熱するとたんぱく質が固まり、液体から固体に変化します。加熱温度で柔らかさや食感をコントロールできます。
- 卵白の凝固温度は約60℃〜65℃
- 卵黄の凝固温度は約65℃〜70℃
加熱しすぎると固くなり、すが立つ(プリンがボソボソになる)ので注意!
熱凝固性を活用した代表的なお菓子:プリン、クレームブリュレ
卵をお菓子に使うときのポイント
新鮮な卵を使うと泡立ちが良く、ふんわりと仕上がる
新鮮な卵白は粘度が高く、空気をしっかり抱き込む力が強いため、メレンゲやスポンジ生地がふわっと軽く、きめ細かく仕上がります。泡立て時間も短縮でき、安定した生地に◎
特にシフォンケーキやビスキュイ生地では、新鮮な卵を使うことが成功のカギになります。
常温に戻してから使用すると、他の材料と混ざりやすく安定する
冷たいままの卵は、油脂や粉類と混ざりにくく、分離(バターがダマになるなど)しやすくなります。
常温(20〜25℃程度)に戻すことで、乳化がスムーズに進み、生地のキメが整います。
プリンやカスタードクリームなどでも、温度を合わせると凝固が安定し、なめらかな口当たりになります。
全卵を使うと、ふんわり感としっとり感のバランスが良くなる
全卵は卵白の「起泡性」と卵黄の「乳化性・コク」をあわせ持っています。そのため、生地に適度なふわふわ感と、しっとりしたリッチな食感を同時に与えます。
バターケーキやパウンドケーキなど、しっかり食べごたえがありながら柔らかいお菓子に向いています。
卵白だけを使うと、しっかりとした仕上がりになる
卵白には水溶性のタンパク質が多く含まれており、加熱すると水から分離して凝集し、固まる性質を持っています。
また、空気を多く抱き込むため、スポンジやシフォンのように高さと軽さがある仕上がりになります。
焼き固めるとパリッとした食感にもなり、マカロンやビスキュイなど、軽やかな食感を出したいお菓子にもぴったりです。
卵黄だけを使うと、ほろほろとした仕上がりになる
卵黄には脂質やタンパク質、ビタミンなどが豊富に含まれており、卵白よりも柔らかく流動性があります。
そのため、卵黄だけを使うと、生地が「ほろり」と崩れるような食感になり、サブレ、タルト生地、フィナンシェなど、リッチでほろっとしたお菓子に最適です。
焼き色も濃くつきやすく、香ばしさが際立ちます。
鶏卵を使った薬膳スイーツ

